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エルバール王国の教育制度 [裏話]

 こんにちは

 今回は『エルバール王国の教育制度』について

 現代編ではそれなりに充実している、王国の教育制度、クロービスの故郷『名もなき島』改め『北の島』にも学校があり、何人かの先生が赴任しているという話は以前出てきていると思います。しかし、これが外伝のころとなるとかなりあいまいと言いますか、きちんとした決まりごとがあってないもののような状態です。

 気候が穏やかで一年を通して過ごしやすいという環境は、人間のみならずモンスターにとっても住み心地のいい場所でしたから、建国当初からモンスターとの戦いはありました。なのでどうしても国の予算の中で一番大きい部分を占めるのはモンスター対策。教育となると優先順位としてはかなり後のほうだったんですよね。建国当初は、モンスター対策が一段落したらいずれは教育や福祉にも力を入れるという考えがあったと思いますが、なかなかうまくいかない。モンスターは時代を追うごとに少しずつ狂暴になり、そのたびに対策費が増やされ、エルバール王国建国より180年余り過ぎていた外伝当時でも、教育費のための予算はそんなに取れない状態。

※モンスターが少しずつ狂暴になっていったのは、この時点ではナイト輝石が発見されていないので廃液とは関係ありません。今までモンスター天国だった場所に人間達が入ってきて、町を作って生活を始めたのがそもそもの原因です。時代が下るにつれて人が増え、それに伴って町も拡大されていったので、モンスター達もどんどん狂暴化していったということですね。

 さて学校ですが、建国当初から学校は建てられていたし、ある程度法律も作りました。まず就学年齢、これは『何歳』とまでは決まっていません。ただ学校には大体7~8歳から行かせるように、それまでは家庭できちんとした教育を施すようにという布令はでています。しかし時代が下るにつれて貴族が増えてきて、貴族向けの学校も出来始めると、少し状況が変わってきました。貴族の場合、社交界での礼儀作法を身につけさせたりするという意味合いもあり、だいたい5歳くらいから学校に行かせたいという要望が出まして、貴族相手の学校は、それを見越して小さい子供でも預かれるように設備を整えています。そして入る年齢は大体ですが、出る年齢は決まっています。それが15歳。

 しかし外伝当時は特に、学校に行かせるにもそれなりのお金がかかりました。学校で使う教科書なども、ただではなかったわけです。なので就学率はとても低く、貴族の子弟や裕福な商人など一般庶民の中でもお金のある家の子供達だけが学校に行けました。つまりそれ以外の子供は、読み書きも計算も学ぶ機会がないまま、小さなころから様々な場所で働いてお金を稼ぐしかなかったんですね。そしてそのまま大人になってしまうと、そこから読み書き計算を覚えるというのは結構大変。そこでおまけ6でイルサが言っていたように、識字率を上げるために図書館に冒険ものや恋愛ものなどの大衆小説を置いたというわけですね。

 やがてモンスター達が大人しくなって誰もが気軽に城壁の外に出ていけるようになってから、つまりクロービス達が命がけで国を守ってから以降、この国の教育制度はかなり充実しました。

 まず、就学年齢が何歳でも、10歳までを初等教育として一区切り、その後5年間は別な学校で中等教育となりました。それまでは、学年ごとに教わる内容は違いますが、学校の場所は一か所で、全員が同じ場所で勉強していました。しかし子供の数が増えたので、さすがにそれではすべての子供にきちんとした教育が出来ないということになったんですね。現代編では、初等学院、中等学院という形で、それぞれ建物が建てられています。

 15歳で中等教育を終えた子供達はみんな働きに出ます。しかし、平和な今ではさらに学ぶ機会がほしいという声が大きくなり、15歳以上の子供達が学べる高等学院が設立されています。ここが18歳まで。18歳で高等学院を卒業してからは、それぞれ専門分野を目指して学校に行ったり働きに出たりするのが一般的です。

 その専門分野の中で代表格なのが、組織としては古くからある医学院。今ではきちんとした『医師になるための学校』と位置付けられています。ここを卒業するか、医師経験年数20年の医師のもとで5年間修業するか、どちらかの道を辿って、さらに医師の国家試験に合格しないと、医師として看板を出すことが出来ないという制度が、現代編では確立されています。

 一方看護婦については、以前も書いたように看護婦の養成学校がありますが、この国の看護婦達には資格制度がないので、特に学校を出なくても看護婦にはなれます。専門知識を身につけることが出来るという点では学校は有意義ですが、患者達と日々接する看護婦達の仕事は医師よりも多岐にわたるため、現場で修業をしたいと考える看護婦達が多いというのが現実です。

 もちろん専門分野は医療関係に限らずいろいろありますが、そのほとんどは民間の学校です。民間の学校組織としての代表格が町の剣術指南。ここに入門して王国剣士を目指す若者もたくさんいます。王国剣士の養成のために国主導で学校組織を作らないのは、そこを出れば確実に剣士団に入れると思われるのを防ぐためです。剣士団の採用基準は結成当初から変わらず『剣の腕とその人となり』のみですので、入団前の育成については国は手を出さないと決めています。

 とまあ、現代編では様々な学校が出来て、ほとんどの子供達は学校で学びますが、それでもなお、満足な教育を受けられない貧しい人達もいます。そう言った人達の場合、例えば学校に行かせるのにお金がかからないとしても、行かせる余裕はありません。子供達は大事な働き手で、小さなころから様々な仕事でお金を稼がなければ暮らしていけないからです。現代編の時代でも、クロービスの相方カインが小さなころ暮らしていた貧民街は存在し、そこの子供達はなかなか学校に行く機会がありません。カインが小さなころほど差別されることはなくなりましたが、それでもまだ、この町の人々に対する偏見は残っています。ちなみにカインの家の隣に住んでいたマーレイ一家ですが、現在はこの町にはいません。時代が変わり、子供達がある程度安定した仕事で働けるようになってからは生活も楽になり、多少はお金がたまったので、街を出て別な場所で暮らしています。この町が故郷とは言っても、いつまでもこの町にいてはいつ暮らしが立ち行かなくなるかわからないので、普通に暮らせて普通の仕事につける場所に移ってきました。

 話がそれましたが、外伝でカインが行っていた『学校』は、正式な学校ではありません。貧民街の救済のために貴族の婦人達が奉仕活動の一環で開いている学校です。天気のいい日は外で、雨の日は教会の中を借りたりして、子供達に勉強を教えてくれます。

 外伝当時は特になんですが、奉仕活動は貴族の婦人達のたしなみでした。貴族の奥方、嫁入り前の娘などが持ち回りでお菓子や軽食を持ち寄って子供達にご馳走したりすることもありました。外伝で『カインが好きな焼き菓子』のくだりがありますが、それはこういう形で食べたことがあるものです。お店で買って食べたなんて、父親のお土産が初めてだったでしょうね。

 王宮ではこういった奉仕活動を後押しすることで、なんとか国中の子供達が平等に教育を受けられる機会を作ろうとしたわけです。完全にとは言えないまでも、その取り組みは功を奏し、今ではこの国の識字率は90%を超えています。

 で

 こういった学校制度があるというのに、ライザーの子供達はなんか半端な年齢で仕事に就いています。ライラは17歳の時にハース鉱山に渡り、イルサは19歳で司書として就職しています。

 なんで?

 まずライラは島の中等学院を出た後、王国に出て高等学院まで進んではどうかと島の学校の先生に勧められていましたが、それを辞退して家で勉強を続けていました。確かに上の学校に行ければ色々と勉強出来ると本人は思っていましたが、ライラが目指している『ナイト輝石の復活』について、詳しい勉強ができる場所があるかどうかが疑問だったということです。口に出すのも憚られる、恐ろしい鉱石として語り継がれていますから、そんなものについて勉強したいなんて言おうものなら、それこそ危険人物にされてしまいかねません。そこで、島随一の蔵書量を誇るクロービスの書斎で、いろいろと勉強していたんですね。

 一方イルサですが、彼女は司書になるための勉強をしていました。司書になるためには国家試験というほどではありませんが、本を扱うための知識を問う採用試験のようなものがあります。ただ、養成学校は存在しないので、司書を目指す人達は独自に勉強します。回想編ではエミーが司書を目指していましたが、彼女は王宮の図書室で手伝いをしたりしながら、自分で勉強していました。イルサの場合はライラと違い、隠すような仕事ではなかったので、必要な教材を取り寄せて勉強していたというわけです。家にいた間はイノージェンの仕事を手伝ったりしていました。このように、15歳で卒業したから即働くという子供達ばかりではありません。もっとも卒業後も家で勉強出来るなんて、ある程度は余裕のある家でもないと難しいですけどね。

 こういった設定というのは、物語の中に特に出てくることはほとんどないですが、この世界ではこういう制度があるということを念頭に置いて書いていないと、どこかしらで矛盾が出てくるんですよね。物語の中で語られないけれども、そこに住む人々が暮らしていくために必要なものは必ずあるので、今後も何かまとまったら載せていきたいと思います。

 イヤ ベツニ ホンペン ススマナイカラ ニゲテルワケジャ ナイデスヨー

 
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